Common sense is the collection of prejudices acquired by age eighteen. It is harder to crack a prejudice than an atom.

人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで誰もが成功する

本書は「ハイコンセプト」、「モチベーション3.0」といったベストセラービジネス本の著者であるダニエル・ピンクの最新著書である。「ハイコンセプト」では、ビジネスマンにとして新興国の労働力を奪われないために左脳に加えて右脳を生かすこと、「モチベーション3.0」では、アメとムチではなく、内発的動機がモチベーションの源泉になったこと、とダニエル・ピンクは常に新しい話題を提供している。今回は邦題からもわかるようにセールスに焦点をあてているが、セールスを扱った他のビジネス本と異なる。売るという行為がこの10年間で大きく変貌を遂げたためだ。本書ではまずその根拠を示しており、それは次のようなものだ。

セールスに関わる人口の増加

米国の労働統計局の資料によると、労働者の9人に1人がセールスに関わる仕事をしている。アマゾンといったセールスマンいらずのインターネット販売が急激に伸びているにも関わらずである。また労働統計局の予測によると今後、さらに販売職の需要は増えると予想されている。もちろん米国だけでなく、世界的な傾向である。イギリス、オーストラリア、日本でも販売に関わる人口は労働人口の10%を超える。

しかし著者がスポットを当てるのは、販売職に分類されない他の8人である。著者とクァルトリクス社が7000人強のフルタイム勤務者を対象とした調査によると、職場で過ごす時間の40%が、売らない売り込み ー購入行為に誰一人関与せずに、他人を説得し、影響を与え、納得させることー に当てられている。そして売らない売り込みは、仕事で成功を収めるうえで不可欠とみなされている。

インターネットによる技術革新は、一方で多くの小規模企業を生み出した。小規模事業社の社員は大企業の社員とは異なり、一人で何役もこなさなくてはならず当然セールスも行う。大企業でもフラットな組織と無秩序な経済状況を背景に、スキルの弾力化が進んでいる。先進的なソフトウェア企業「アトラシアン」社や「パランティール・テクノロジー」社では、営業職の人間はいない。エンジニアが顧客と直接接触し、顧客のニーズを発見し、製品がどのように利用されるか理解し、製品の改善点を見つけ出す。

情報の非対称性

1970年に発表されたカリフォルニア大学のジョージ・アカロフの論文「レモン(*1)の市場 ー品質の不確実性と市場メカニズムー」によると、中古車市場では、その車が欠陥車なのか良質な車なのかの情報は売り手しか知らない(情報の非対称性)ため、買い手は疑心暗鬼に陥り、その結果、ペテン師やイカサマ師が跋扈し、健全な市場が形成されないとしている。一般の人々にとってセールスマンのイメージが悪いのはこういうわけだ。

ところで現代は事情が異なる。買い手は売り手よりも情報を多く仕入れて店を訪れる。売り手は情報の管理者であり、浄化器の役割ー殺到する事実やデータの解明、選択ーを手助けするのだ。情報の非対称性は緩和され、売り手の役割も変わってきている。

設立から20年を経てフォーチュン500企業に選ばれた中古車販売業のカーマックスは、そんな変化に対応した企業だ。車両の状態や履歴の報告書は顧客は自力で見つけられるのだが、カーマックスは無料でそれを渡す。値段は査定額どおりで値引きは無く、販売員は歩合給で働くが歩合は価格にもとづかず、不当に高い車を買わされるという顧客の心理を大幅に緩和している。

(*1)アメリカでは事故車といった品質の悪い中古車のことをレモンと呼ぶ

本書では、上記のようにセールスの変貌の論拠を示すとともに、その後、セールスに必要な3つの資質やスキルについて論を展開している。

以上

人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで誰もが成功する
ダニエル・ピンク 著、神田昌典 訳
2013/7/3 発行

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

カレンダー

2021年3月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031