Common sense is the collection of prejudices acquired by age eighteen. It is harder to crack a prejudice than an atom.

ヤバい経営学

ビジネス常識の裏側をのぞく研究の集大成といった趣きの本だ。本書で覆される常識とは例えば次のようなものだ。

  • リストラは短期的な業績には寄与するが、長期的には企業価値を損なっている
  • 社外取締役は、会社の方針に重大な懸念を持っていても、会社の戦略についてあまり反対しない
  • 経営者はビジネスについての数値を理解していない。経営者に自社の前年の売上について質問した際の回答は平均475%の誤差がある。
  • 新しい技術や製品を生み出さない研究開発部門でもメリットがある。それは研究開発部門を持たない企業に比べ他社の発明を自社製品に応用することができる点である。

上記のように興味深い視点を提供してとても書ききれないが、株式投資家に役立つトピックを紹介する。

買収

株式市場で価値を生み出すかどうかという点において、70〜80%の買収は失敗に終わっている。過去の75年の買収とその後の株価の推移を調査した研究によると、買収を発表してから10日ほどで、平均して0.34〜1%ほど買い手企業の株価が下がってしまう。長期についてはどうだろうか?企業統合が完了して5年経った後、買収を行った企業の価値は10%以上も失われている。

買収がうまくいかない理由は2つある。ひとつは、やたら早いペースで買収を進めることだ。その場合、買収後に十分に統合が行われなかったり、価値を生まない買収をしてしまう。もうひとつは、買収対象企業に対して過剰な金額を払ってしまうことだ。本来の企業価値よりも70〜80%上乗せした額を払うことがよくある。この上乗せ額を買収プレミアムという。

なぜ高いプレミアムを払ってしまうのだろうか?別の研究者は、自信過剰な経営者が、自分なら駄目になった企業を復活させることができると思い、高いプレミアムを払うのではと仮説を立てた。そこでメディアに賞賛されている経営者ほど高いプレミアムを払っているかどうか計算してみた。結果はイエスで、ある会社の経営者に関して、好意的な記事がひとつあると、プレミアムの額は少なくとも4.8%上昇する。

ストック・オプション

オプションとは将来のある時点に決められた値段で株式を買う権利のことだ。たとえば2010年1月に会社Xの株式を1株100ドルで買う権利を持っていたとする。2010年1月に株価が120ドルになったら1株あたり20ドルも得することになる。しかし株価が90ドルになっていたら損をするので、買わなくても良い。

経営者がストックオプションを大量に持っているほど、より大きな賭けに出るのだ。さらに悪いことに大勝することよりも大敗することが多い。そしてストックオプションと利益操作の関係について調査したところ、株価を権利行使価格を下回っているストックオプションを多く抱える経営者ほど会社の財産を偽って報告していた。

働きやすい職場

社内託児所やフレックスタイム制度、メンタルヘルス検診のような「それって意味あるのか」という施策は株価に影響するのだろうか?「ウォールストリート・ジャーナル」紙をもとに、働きやすい職場支援制度を発表したフォーチュン500企業の株価について検証した。その結果、1980年代前半には、株式市場に反応しなかったが、1990年代には平均して0.48%上昇していた。

おわりに

ちなみに似たタイトルで話題となった「ヤバい経済学」とは著者が異なるし何の関係もない。出版側の思惑でベストセラーと似たような邦題をつけたようだ。しかし、タイトル負けしない面白さを提供しているのは間違いない。もちろん引用している研究が信頼に値するものならば良いのだが。

以上

ヤバい経営学
フリーク・ヴァーミューレン 著
2013/3/14 発行

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