Common sense is the collection of prejudices acquired by age eighteen. It is harder to crack a prejudice than an atom.

上級国民/下級国民

2019年4月に87歳の元官僚が起こした交通死亡事故で、運転手がしばらく逮捕されなかったことに対し、2日後に起きた神戸のバス運転手が起こした死亡事故で、バス運転手が現行犯逮捕されたことがきっかけに、ネットで飛び交った言葉が「上級国民、下級国民」という言葉だ。「上級国民、下級国民」という言葉は、下級国民に落ちてしまえば、個人の努力に関わらず這い上がれず、幸福な人生を手に入れられるのは、上級国民だけだというニュアンスを持っている。本書では、日本の労働市場の変遷を追い、下級国民が生み出されたのかを紐解きつつ、様々な話題が提供されている。

中高年ホワイトカラーの失業は5万人

1990年代にバブルが崩壊し、メディアは中高年の「過激なリストラ」を大々的に報じていた。しかし2001年発刊された「仕事のなかの曖昧な不安」で著者の玄田さんは、2000年8月の「労働力調査特別調査」より、45歳から54歳までの大卒以上の完全失業者は5万人で、これは同時期の失業者310万人の1.6%にすぎないと指摘している。

それでは、誰が失業に苦しんでいたかというと、25歳から34歳までの85万人で、そのうち中卒と高卒が54万人と3分の2を占めている。また、45歳から54歳までの中卒、高卒が43万人が失業している。

フリーター、パラサイト・シングル、ニート、ひきこもりは、繋がっている

90年代後半の就職氷河期の若者は、賃金の低いフリーターや非正規になりやすく、成人しても実家が暮らしの人が増え、パラサイト・シングルと呼ばれるようになった。さらにアルバイトは30を超えてフリーターをやっていると周囲から奇異な目で見られるし、同窓会などで学生時代の友人に会うの機会にも足が向かなくなる。そして失業してひきこもりになるという風に、フリーター、パラサイト・シングル、ニート、ひきこもりは繋がっている。

貧困の解消に最低賃金の引き上げは有効か?

最低賃金の引き上げが、雇用を減らすかどうかは、経済学者の間で議論が続いているが、「若者」の雇用にはマイナスであることで合意されている。最低賃金の引き上げは、企業にとって経験のない若者を高い賃金で雇わなければならないと法律で規制されることになり、若者を雇わず、経験のある人を同じ給与で雇う方が良いと経営者は考えるためとのこと。

おわりに

本書では、90年代以降、団塊の世代を雇用を守るために、若者が犠牲になったことを示しつつ、下級国民が生み出された経緯を考察している。また未来の社会保障制度についての見通しや、上級国民/下級国民は、モテ/非モテという分断に繋がっていると指摘し、さらに世界的にも同じことが起こっており、欧米でテロ組織に参加したり、銃乱射事件を起こす若者が後を絶たないこととも結びつけて考察している。

以上

上級国民/下級国民
橘 玲 著
2019/8/1 初版発行

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