Common sense is the collection of prejudices acquired by age eighteen. It is harder to crack a prejudice than an atom.

10万個の子宮

2013年4月に定期接種となった子宮頸がんワクチンは、ワクチンの副反応騒動を受けて、わずか2ヶ月後に、政府は「積極的な接種勧奨の一時差し控え」を決定したため、接種率は約70%から1%に落ち込み、さらに現在、国家賠償訴訟で係争中である。10万個の子宮というタイトルは、国家賠償訴訟に決着がつくのに10年かかったとして、年間10,000人が罹患(うち3,000人が死亡)する子宮頸がんで、10万個の子宮が失われるという意味だ。本書では、医師でもある著者がワクチンの副反応の根拠となっているエビデンスを反証し、ワクチンの副反応ではないと主張しつつ、WHOや諸外国での状況についても紹介されている。

WHO(World Health Organization:世界保健機関)

子宮頸がんワクチンは、WHOが接種を推奨し、130カ国以上で承認されているワクチンである。2015年12月にWHOが出した声明で、日本は次のように名指しで批判されている。

「専門家の副反応検討委員会では子宮頸がんワクチンと副反応の因果関係はないとの結論を出したにもかかわらず、国は接種を再開できないでいる。以前からGACVS(*1)が指摘しているとおり、薄弱なエビデンスに基づく政治判断は安全で効果をもたらす可能性があるワクチンの接種を妨げ、真の被害をもたらす可能性がある」

(*1)Global Advisory Committee on Vaccine Safetyの略でWHOのワクチン安全性に関する諮問機関

2017年7月にも、GACVSは、接種率が向上しない日本の状況について、1995年から2005年で3.4%増加した日本頸がんの死亡率は、2005年から2015年には5.9%増加し、増加傾向は今後15歳から44歳で顕著となるだろうと警告を発している。

反ワクチン騒動に対する諸外国の対応

子宮頸がんワクチンに対して、反ワクチン運動が起こるのは、日本だけではない。諸外国では、政府とアカデミアが協調して対処している。

デンマークは2015年に、日本にも調査団を送ったり、欧州の薬事当局EMAに疾患データベースを解析させ、副反応を否定するデータを発表した。さらに才色兼備で知られるメアリー皇太子妃が、 WHOのビデオメッセージに登場し「ワクチンに関するどんなしつこい噂もワクチンが命を守るという真実を上回る説得力を持たない。」と発言し、対応している。

アイルランドでは、フェイクニュースとSNSにより接種率が下がってきているというアイルランド医師会の発言を受け、弱冠28歳のハリス保健相が「命を守ろうとする医学的努力がたわごとを広げる人たちによって妨害されている」と発言し、反ワクチン運動を一蹴。さらに「ワクチンに関するアドバイスをするなら医者になってくれ。医者でないのなら、保健政策に立ちはだかるな」などと毅然とした態度を示した。

おわりに

2017年8月には南米コロンビアでも日本に引き続き国家賠償訴訟が起こされ、日本を震源地として、世界に影響を与える事態になっている。日本でも名古屋市が大規模調査を行い、副反応との因果関係はないとする結果を得られているにもかかわらず、接種状況に変わりはない。政府、マスコミ、一般人を含め、エビデンスに基づく医療が理解されるのは、まだまだ先かなという印象。

一方で、幼い娘を持つ親としては、マスコミの報道を鵜呑みのするのではなく、ワクチンを接種させるべきか検討する際の材料として、一読の価値がある。

参考:日本産婦人科医会 子宮頸がんワクチンの安全性に関する最新情報 

http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/10/9f232994af13b9c474d83d29ee7cb343.pdf

以上

10万個の子宮
村中 璃子 著
2018/2/9 初版発行

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