Common sense is the collection of prejudices acquired by age eighteen. It is harder to crack a prejudice than an atom.

日本人が知るべき東アジアの地政学(2)

日韓関係の悪化の背景を知りたくて読んだ本だが、日韓関係だけでなく、ロシア、中国といった東アジアに領土を持つ諸外国も含めた外交を読み解くうえで、重要な考え方であり、4回に渡って要点をまとめたみた。第2回は、朝鮮半島の情勢だ。※地図の拡大はこちら

蹂躙される半島国家

典型的な半島国家である朝鮮半島は、たびたび大陸からの強大な勢力の侵略を受けてきた。その結果、どんなに屈辱的であろうと、屈するしか選択肢はない。第2次世界大戦後、ランドパワーの大陸国家ではなく、シーパワーの日本や米国と安定した関係を続けていたが、むしろ例外であり、現在のように韓国が中国と関係を深めている現在が、本来の姿に戻ったと言える。

ところで、朝鮮半島は、中国の王朝としては、漢、隋、唐、元、清に侵略され、それぞれの属国として存在してきた。悲惨な歴史のなかで、大陸との関係が理想的だったのは明と李氏朝鮮の時代だ。元をモンゴル高原に追い返した明の成立に乗じて、高麗を打倒した李成桂は、安定した国家運営に成功した。

朝鮮半島における朱子学の普及

李氏朝鮮時代、明にならって様々な制度を導入した際、明の官学であった朱子学を取り入れる。朱子学は突き詰めれば「宇宙と人間を統一的に説明する思想」で宇宙はすべて「理(法則)」と「気(物質)」からなり、「理」が「気」を支配すると考える。この考え方を人間に当てはめると、理性が多い人ほどレベルが高く、理性のない人間はただ生きているだけで、動物と同じと考える。この考え方に基づき、朱子学は人間をランク付けし、漢文を読めない異民族は「夷狄」として中華によって支配されることが当然の帰結と考える。

その後、朱子学は、明が滅んだ後に中国では廃れるが、朝鮮の支配層は朱子学を重視し続け、自分たちこそが本来の中華を守っているという自負を抱いた。これを「小中華」思想と呼ぶ。また、中華に支配されるべき「夷狄」であるツングース系狩猟民である清や日本に朝鮮半島は支配されてしまうが、現実より理念を優先する朱子学は生き残り、朝鮮民族の考え方に今も影響を及ぼしている。

北朝鮮

韓国の人が政治体制がまったく異なる北朝鮮に心を寄せやすいのは、北朝鮮の主体(チュチェ)思想の基本構造が、朱子学に社会主義を加味したものだからである。主体思想によると、朝鮮民族はひとつの生命のごとき有機体であり、キム一族はその頭脳、その命令を全身に伝える神経系統として朝鮮労働党員、外敵から身を守る手足としての朝鮮人民軍、労働者、農民は臓器として生命体を維持するためにそれぞれの役割を果たし、頭脳と神経系統に絶対服従する。このように主体思想は人間をランク付けする朱子学の考え方が取り入れられている。

また主体思想は韓国人に魅力的に映るポイントがもうひとつある。主体思想は、旧ソ連や中国などの共産国家との違いを鮮明にしながら、どの大国の圧力にも屈せずに、朝鮮民族が政治、経済、国防を主体的に行うことができるイデオロギーだからだ。さらに、朝鮮民族は半島国家として周辺国に蹂躙され続けており、韓国はいまだにその構図から抜け出していないのに対し、北朝鮮には民族を守り、民族の誇りを保障してくれる核とミサイルがある。韓国の文在寅が統一朝鮮を目指す理由がここにある。

第3回に続く。

以上


日本人が知るべき東アジアの地政学
茂木 誠 著
2019/6/25 初版発行

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