Common sense is the collection of prejudices acquired by age eighteen. It is harder to crack a prejudice than an atom.

日本人が知るべき東アジアの地政学(4)

日韓関係の悪化の背景を知りたくて読んだ本だが、日韓関係だけでなく、ロシア、中国といった東アジアに領土を持つ諸外国も含めた外交を読み解くうえで、重要な考え方であり、4回に渡って要点をまとめたみた。第4回は、日本の進む方向についての提言だ。※地図の拡大はこちら

対ロシア、対中国

北方領土問題では、ロシアは決して四島一括返還には応じない。日本の北方領土返還運動の背後に米国がいて、返還しようものなら米軍基地を建設すると考えているからだ。対ロシア問題は、東アジアからの撤退を目論む米国を引き止め、地域の覇権を狙う中国にいかに対応するかという構図の中で答えを探す必要がある。前回に見た通り、中国は北方の脅威(=ロシアの脅威)から解放された時、海洋進出を図る。

日本が目指すべき方向性は、ロシアと中国が対立するように仕向けることだ。逆に中国が狙っているのは、日本が中国ともロシアとも対立を深め、結果的に中ロ同盟の強化を後押ししてくれることだ。そこで、日本が四島返還を諦めて二島返還で妥結し、その上返還を受けた場所は軍事基地を建設しないことを約束し、同時にシベリア開発に日本が協力することで、日ロ平和条約を結ぶ、もしくは日米ロの三国での同盟を模索するという提言がなされている。

頼りにならない国連

日本は周辺国と領土問題を抱えている。ロシアが占領中の北方四島、韓国が狙う竹島、中国が狙う尖閣諸島などがある。いざとなれば国連に訴えれば良いと思うかもしれないが、その手段は徒労に終わる。それは国連が超国家組織ではなく、大国の談合組織にすぎないからである。紛争が起きた時に「X国は侵略国」と認定して経済制裁や武力制裁を発動する組織として国連安保理事会があるが、五カ国の常任理事国(米・英・仏・中・ロ)には自分たちが制裁対象にならないように「拒否権」を行使できる。つまり五カ国の侵略行為を安保理は罰することができない。冷戦時代にはソ連は120回以上、米国は80回以上、拒否権を発動している。

さらに問題なのは、国連憲章の「旧敵国条項」だ。これは「敗戦国のドイツや日本が、国際秩序を乱すような行動に出た場合、国連加盟国は安保理決議なしに武力行使ができる」というものだ。例えば、もし日本が尖閣諸島に自衛隊を派遣したとして、中国が「国際秩序を乱した」とみなした場合、単独で日本を軍事制裁できる。中国はこの軍事制裁を国連憲章で認められた正当な権利であり、侵略に当たらないと強弁するだろう。国連は日本を守ってくれない。

核兵器

国家間の衝突を回避する仕組みは、国連のほかにもう一つある。核兵器の保有だ。核兵器の原料はウランとプルトニウムで、ウランは採掘することで入手できるが、プルトニウムは原子炉の中で生成される。つまり原子力発電所を持つ国は、核兵器の材料を生産していることにもなるため、国際原子力機関(IAEA)による査察が義務づけされている。日本も当然IAEAの査察を受けており、プルトニウムは核兵器に転用できないようガラスで固めて、青森県六ケ所村の地下深くに埋めている。日本はまた、ミサイル技術もある。宇宙ロケットと弾道ミサイルは同じ技術だからだ。

中国はすでに核を搭載できる中距離ミサイル「東風」を200発程度保有しており、日本の主要都市は全て攻撃目標になっていると考えられる。これに対抗するために、合理的な選択肢は、日本も核武装して抑止力を働かせることだ。ただし、技術的に可能でも国内外の理解を得るのが難しい。国民の核アレルギーは強烈であり、周辺諸国も黙ってはいない。著者は代替案として「核シェアリング」と「あいまい戦略」を提言している。

核シェアリングは、米軍の核兵器を共同で使用するという方式で、あくまで米国の許可が必要になる。NATO加盟国ではドイツをはじめ、オランダやベルギー、イタリアが米国とすでに核シェアリングをしている。一方、「あいまい戦略」とは、核兵器を開発しているのかどうかあいまいにしておき、周辺国を疑心暗鬼に陥れ、事実上の抑止力として機能させることだ。これを、実際に活用している国として、イスラエルがある。ただし日本が「あいまい戦略」をとるには、「非核三原則」の撤廃を宣言する必要がある。

おわりに

本書は、今年一番ワクワクしながら読んだ本になった。これまで、海外情勢はニュースを見てもあまり気にならなかった(自分に関係がないという感覚だった)が、背景や歴史的な観点で結びつけて考えると、無味乾燥だったニュースが、全くイキイキとしたものに見えてくる。

以上


日本人が知るべき東アジアの地政学
茂木 誠 著
2019/6/25 初版発行

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