Common sense is the collection of prejudices acquired by age eighteen. It is harder to crack a prejudice than an atom.

「予測市場」という新戦略

日本のことわざ「三人よれば文殊の知恵」を情報技術で時、場所、人数を選ばずに実現するのが予測市場だ。予測市場は2005年に Bussiness Week 紙がCEOが知っておくべき10の新しい技術のひとつとして取り上げられて注目され、じわじわと様々な分野に応用が進んでいる。本書はそんな予測市場の適用事例をとりあげつつ、著者が考える応用分野や予測市場運営のコツを紹介している。今回の記事では、本書で紹介されている事例のうちビジネスに応用されているものを紹介する。

ライト・ソリューションズ

ライト。ソリューションズ社は米国で2000年に創業したソフトウェア会社で2011年には185名の従業員を抱えている。同社には「イノベーション・エンジン」と呼ばれる予測市場があり、社員ならば誰でも、新しい製品、サービスや既存の事業を効率化するアイデアを提案でき、また成功すると予想されるプロジェクトに支持を表明(=株を購入)することができる。運営を開始してから2年後には50もの革新的な製品が生み出された。

成功した事業のひとつは、同社のもつリアルタイムに画像を処理する軍事用のパターン認識を応用した歴史や数学を教えるゲームの開発で、おもちゃメーカーにライセンス供与することで100万ドル以上の売り上げを得た。ちなみに、このゲームを提案したのは同社の秘書である。

ベスト・バイ

ベスト・バイ社は2010年には490億ドルの売上、11億ドルの営業利益を上げた世界最大の家電量販店である。2005年に副社長を勤めていたサバーツ氏は、2005年より予測市場の小規模の実験(ベスト・バイのギフトカード売上予測、クリスマスシーズンの売上予測)で成果をあげ、経営陣に大々的に予測市場を利用して意思決定を支援する情報を得ていくことを認めさせる。

ベスト・バイの予測市場の成功が大きく報じられたのが2008年1月で、発売前のノートパソコンのサービス・パッケージの四半期売上を予測するものだ。ベスト・バイの予測市場は、サービス開発チームの予測よりも25%も少なかったが、初期売上は予測市場のほうが正しかった。すぐさまパッケージは中止され、再設計された。

マイシス

マイシス社は、世界各国の金融サービス会社や医療会社向けのソフトウェアを開発する1979創業の老舗会社だ。同社のエルキンス氏は予測市場を紹介する書籍「みんなの意見は案外正しい」を読み、社内でテストすることを経営陣に提案し、足がかりを作る。

マイシスは初期のプロジェクトから成果をあげている。コンサルティング会社のマッキンゼーに依頼して今後、マイシス社が投資銀行向けに力をいれていくべきか、資産運用会社に力をいれていくべきか、といった質問に対する結論を求めた。同じ質問を同社の予測市場に投げかけたところ、市場の予測はマッキンゼーとまったく同じになった。予測市場のコストはソフトウェアのリース料金と優秀な参加者への賞金を足してわずか5500ドルである。もちろんマッキンゼーのコンサルタントチームを雇うことはできない。

おわりに

本書は企業での応用事例のほか、選挙、スポーツ、映画の興行収入といった予測の事例が紹介されている。一方で、まだ応用されていないものの著者が有効と考えている様々な適用分野(例えば行政分野)は興味深い。大学の先生あたりで実践してくれないかな。

以上

普通の人たちを予言者に変える「予測市場」という新戦略
ドナルド・トンプソン 著、千葉 敏生 訳
2013/01/18 初版発行

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

カレンダー

2021年4月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930